今日も今日とて僕は僕をコロシます


名刺入れと言ったからか、律義に彼女は名刺入れを渡そうとしたが、血で汚れるからと見るだけになった。


銀色で、座る黒猫が彫られた、なんとも彼女らしい名刺入れ。


「名刺はなくとも、口はあるだろう?」


「へ……、ああ、僕は……名前言ったら呪われるとかありませんか?」


「それも私の分野ではない。呪術だ。第一、呪術で使う名は、呪いをかけるそいつが自ら自身でつけた名前をさす。

親(他人)から貰った名など、自分の本体には繋がらない。認識されるだけの名に、呪い効果など付与されないよ」


< 31 / 302 >

この作品をシェア

pagetop