天使の羽根

Act.5


 いつものように明かりのない家を見上げ、寂しさが込み上げた穂高は、小さな息を吐き出すと、鍵を取り出し差し込んだ。

 心にチクリと痛みを残す冷たい音が響く。

「今日は楽しかった?」

 不意に後ろからかけられた声に、穂高の肩が上がる。

 だが、すぐさま、その声の主が解り、安堵するも嫌そうな表情を作って振り向いた。

「また来たのか、懲りねぇ奴だな」


< 146 / 562 >

この作品をシェア

pagetop