九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】



「双葉さんの頭部の損傷は、額側にできていたんですよね」


彼方が辻に尋ねた。

辻は再び手帳を取り出す。


「はい、確かに双葉氏は額側から頭蓋骨が割れていたそうで。

飛び込み台から落下したと思われる地点の距離からしても、突き落とされたというよりは自ら飛び込んだ、と考えるのが自然だそうです」



『突き落とされた』場合、意図的に落ちたわけではないために落下地点はポイントから真下に近い位置になる。

しかし『自ら飛び込んだ』場合、落下地点はポイントからかなり離れた位置にできるのだ。



遺体の状況は自殺と考えるべき、しかしプールに水が入っていた謎が残る。

双葉が自殺したとしても第三者が水を入れたことは間違いない。



ならば、何故。



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