九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】
「十和田さん」
少し険しい顔をする彼方に、十和田は僅かに驚いた顔をした。
どうなさいました、と落ち着いてこたえる。
「プールに行きましょう。
ちょっと確かめたいことができました」
「えっ!
推理、できたんですか!」
辻の問いに、彼方はニヤリと笑って答える。
「双葉さんの遺体の謎は。
自分の仮説が正しかったら話の筋は通ります。
一条さんの密室も…ゴミ箱か持ち物検査で『ある物』が見つかれば成立しますよ」
さらりと答えた内容に、十和田と辻は息を飲む。
「その仮説とは!?」
辻が促すも、彼方は首を横に振った。
「まだです。
あくまで仮説の段階ですから。
話すのは、目薬の中身が発覚し、現場のプールを見てからにしましょう」
さ、行きましょう、と言って彼方はくるりと踵を返した。
「待ってください、九我刑事!」
それに、十和田と辻は慌ててついていったのである。