浮気な恋人
2.大地

「新しくできたショッピングモールを見に行こう」


駅伝予選会から1週間後、ようやく大地からの誘いが来た。


あれ?寮の近くの紅葉じゃなかったの?


私は一瞬思ったが、べつにどっちでもかまわなかった。
大地と一緒なら、どこだっていい。


「《△△ガーデン》って、知ってるよね?」
と彼は、電話で私に話す。


私は、少しはっとした。
そこは、右翼部分と左翼部分に分かれていて、今回できたのは、その左翼部分なのだ。


「うん、知ってる…。右翼部分なら、行ったことがあるよ」

「そっか。だいたい、同じようなものらしいけどね。俺、新しいものができると、すぐ見たくなるのよ」

「へえ。私はそういう人に連れて行かれるタイプだな。自分で行くよりも」

「じゃあ、よかった。ミクを誘って」

「うん。でもじゃあ、紅葉はどうなるのかな?」

「紅葉?」

「見に行こうって言ってくれたでしょ?寮の近くの」

「ああ。そう。うん。それはまた今度ね」

「うん!」


私は、その右翼部分に、シマと一緒に行ったことを、速攻忘れて、元気よく返事した。
「また今度」って、嬉しい言葉だ。


これで、大地と少なくとも2回は、カップルのように一緒に歩ける。


私は、ベンチやなんかに座る2人が、夕陽とともに染まっていき、やがてどちらともなく見つめあい……という、ものすごい想像力を働かせて、「ギャー!!」とクマのえっちゃん(←なぜかそういう名前なのだ)にボカスカあたっていた。


アホだ……。ほんとうに、私は想像力100%のアホなのだ。
現実は、ラブソングの歌詞とは違うのに。
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