月夜の天使
小さなアパートの一室に二人は住み始めた。

カオリは徐々にカナンに自分のことを打ち明ける。

自分は月の一族であり、カナンの一生を見届けるのが自分の義務であること、月野いずみからその使命を託されたこと。

あの火事以来、カナンはずっと口を閉ざしてきた。

カオリの優しさに触れ、いつしかカナンの口から切なる想いが吐き出される。

「ミズキとトオヤに会いたい・・・。二人はどこにいるの?教えて、カオリさん」

「今は、敵の気配が全く消えているの。トオヤには奴らのことを探ってもらっている。トオヤはいずれ姿を現すわ。あなたを護るためにね。でも・・・」

カオリは言うかどうかためらいの表情を見せる。

「ミズキは、消息を絶ってしまったの。あの火事以来ミズキの行方はわからないままなのよ」

カナンの小さな胸が張り裂けそうにうずく。

こんなにも、カナンはミズキに会いたかった・・・!

カナンの小さな恋が、痛みとともに芽生え始める。

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