群青ホームラン



そしてピッチャーがボールを投げた。

最初はカーブ、次はフォーク。まるで“こんな球を投げられるんだぜ”って自慢されてるみたいな嫌悪感。

そんなに自信があるなら正面から勝負しようぜ、ピッチャーさん。


俺は絶対に球を打ち返す。絶対に、絶対にな。


三回目の投球、ピッチャーが思いっきり球を投げた。速くて鋭くて全く見えない、でも……。

俺は思いっきりバットを振った。

球は俺が得意なストレート。タイミングは予想通りぴったりだった。

そしてカキーンと気持ちがいい音がしてボールは遥か向こうに飛んで行った。


ピッチャーや相手チーム、俺の仲間にギャラリーがみんなボールを視線で追う。

ボールは緑のフェンスを飛び越え、草むらに落ちた。

野球用語で場外ホームラン。


わーっと一斉に歓声が聞こえた。球を打った衝撃で手は微かにジンジンしている。


俺はこの一瞬、この時だけは主役になれた気がした。

いつも脇役で全然かっこ悪いけど、少しは好きな人にかっこいいところを見せられたかな?
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