愛して。【完】





「タカ、お腹空いた~」




隼の一言で、タカの目線は部屋の壁掛け時計に移る。




「あ~…もうこんな時間だっけ」




時計が示している時刻は19時30分。


ここ数日間と比べれば、遅い時間。




「蓮、時間ないしシゲさんとこでいいだろ?」


「ああ」




どうやら初日に行ったシゲさんのお店で夕飯を食べるみたいだ。


蓮の返事を合図に、みんな立ち上がる。


それはあたしも例外じゃなくて、傍にいた蓮に引っ張られるように立ち上がった。




「ん~、何か疲れたし腹減った~」




そう言って伸びをしながら扉を開けて歩いていく大河。


隼、颯、タカもそれに続く。


ただし、蓮は立ち止まっている。




「蓮?」




不思議に思って表情を伺う様に覗き込むと、そのまま唇が触れる。


悪戯っ子の様に笑う蓮に、胸が跳ねる。


キスをしていたのを見られてないかと前を見ると、もうそこには誰もいない。


すでに階段を下りて行ってしまったらしい。




「行くか」


「う、うん…」




思わずどもってしまった返事に、顔に熱が溜まる。


蓮はそんなあたしを見てまた笑う。




踏み出したあたし達の手は、自然と絡まっていた。





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