毎日がカレー曜日
 人形のいるほうの壷は、比較的新しいのが分かる。

 九十九神がいないのだ。だから、骨董というほどのものではないのだろう。

 九十九神がいないからこそ、古い壷は誰にも邪魔されず、ああして人形をあらわすことができたのだろうが。

 何故に怒っているのか。

 サヤは、まだその答えにたどり着いていなかった。

 古い壷が、新しい壷に人形を出す意味も──

「おし、セット完了」

 気合の入った孝輔の声に振り返ると、彼は室内測定器にスイッチを入れるところだった。

 てっぺんのアンテナみたいなものが、ゆっくりと回っていく。

「まだ、怒ってる?」

「はい」

「そっか」

 言葉に、素直にそう答えた後、なんとなく笑ってしまうやりとりだと思った。

 まるでサヤと孝輔がケンカしているかのような言葉だったのだ。

 そこに立っている使用人は、どう感じているのだろう。

「霊の形、分かる?」

 あっちのほう。

 孝輔は、古い壷を指す。

 サヤは首を横に振った。

 そこにいるのが、見えるわけではないのだ。いることは分かるし、気持ちも伝わってくるのだが、形を知ることは重要なことではなかった。

「温度パターン変化なし。酸素、二酸化炭素類の含有率も変わらず…ほんとにあんのかよ、E値って」

 むむむ、と孝輔は唸りをあげる。

「見つからないのなら、そう直樹さんに言ったらどうでしょう?」

 この世の全てが、科学で証明されているわけではない。

 直樹のいうE値というものが、本当にあるのかないのかすら分かっていないのだ。

「ぜっ、て、え、イ、ヤ、だ、ね」

 サヤの言葉は、発音もくっきりと蹴飛ばされた。
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