毎日がカレー曜日
「そもそも、私とヤイバの出会いはいまから8年前!」

 燃え盛りながら、兄はオーバーアクションで、心の友について語り始める。

 一方、テーブルのこちら側はと言えば、差し出された綺麗なタオルで、孝輔が顔を拭き始める。

「あんがと」

 甘酸っぱく汚れたタオルを、手持ち無沙汰にしながら、孝輔は彼女に礼を言う。

「いえ」

 にこー。

 微笑みながら、サヤは彼の手からタオルを受け取ると、給湯室の方へ持っていってしまった。

 水音が聞こえてくる。

 あのタオルがどうなっているのか、考えなくても分かった。

 何というか。

 世界の違う女性だ。

 そう、彼は感じた。

 孝輔より少しばかり年上だろうことを省いても、彼女の持っている空気は、現代日本のそれとは違う。

 なんともはや、居心地の悪い感触だ。

「そしてヤイバは、私にこう言ったのだ! 『もし、お前の命にかかわるような危機が訪れたなら、俺は必ずお前を助けに行くだろう』と! だから私も……!」

 兄の演説は、まだ続いているが、彼は聞いちゃいなかった。

「なあ、アニキ。あのサヤって人……」

 そして、自分が聞きたい内容を切り出そうとした。

 が。

「聞いてんのか、この愚弟! ここからがいいとこなんだぞ!」

 スパコーーンと、孝輔の額を直撃したのは、箱ティッシュだった。

 すっかり暑苦しい思い出語りに熱が入り、目的を見失った兄がそこにいたのだ。

「物投げんなボケ! てか、要点だけ話せ!」

 朝食も話も──なかなか進みそうになかった。
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