毎日がカレー曜日
 塚原直樹という名前は、この世界ではさして知られていない。

 しかし、ゴーストバスター・ナオキと言えば、関係者は耳をピクリとさせるだろう。

 唯一、『01理論』というもので、幽霊を『削除』できる男だからだ。

 そもそも幽霊というものは、成仏できずにいる人や動物の魂だ。

 それが、何らかの形で現世に影響を与えると突然、『怪奇』とか『恐怖』とかいう、うさんくさい頭文字を使われるハメになる。

 その悪影響を取り除く仕事をしている人間は、意外に多いのだ。

 神仏の仕事に携わるもの、霊能力の高いもの。

 だが、孝輔の兄はそのどちらでもなかった。

 霊能力なんか、はっきりいってゼロ以下のマイナスだろう。神や仏を信じているとも、到底思えない。

 しかし、そんなゼロ以下のマイナス男にさえ感じられるような、強い霊の退治には、めっぽう強かった。

 だから、直樹には普通の専門家では、手におえないような大きな仕事が転がりこんでくる。

 何故か。

 霊能力の高い人間は、強い霊にはかなり強い影響を受ける。

 それを破るためにも、更に強いエネルギーが必要だ。

 しかし、直樹の霊能力はゼロ以下。

 たとえ霊の力が強くても、本人が至って鈍いため、大きな影響を受けないのである。

 だから、著名な霊能力者たちが脂汗をかき、うまく動けずにいる場所であったとしても、直樹だけは平気でスタスタと歩きまわることができる。

 弱い霊相手の仕事をしないのは、どこにそれがあるのかさえ分かりづらいために、非常に仕事がしづらいせいだ。
 理由は、ただそれだけ。

 修行した霊能力者たちが、この真実を聞けば、そのいい加減さに呆れ怒ることだろう。

 本人曰く。

『私は、自分を霊能力者と名乗ったことはない。私は、ただのゴーストバスターだ』

 だから、詐欺でもなんでもない。
 そう言うのである。

 だーれーが、あの理論のプログラミングをしたと思ってんだ。自分ひとりの手柄みたいにしやがって。

 ゴーストバスター・ナオキの弟は、違う方向に才能の花を咲かせていた。
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