えみだま

ソロとソロ

県大会予選。今日はシングルス。

トーナメント式。8ブロック。

会場は6つ。2ブロックを掛け持つ会場が2つ。

ウチの部員達は、会場で1人になることもなく、ただ半分に別れただけ。

だから、それぞれの会場に1人ずつマネージャーがいるという形になった。

こっちのマネージャーは私。

選手は、要、高須、上甲。

要は普段の練習を見る限りでは大丈夫。

高須はわからない。体力勝負になるように追い込めば勝てるかもしれない。

上甲は番手戦で、サービスとリターンのエースを何度か取ってたけど、結局は全敗。まだ試合では勝てない。

こっち側は要に頑張ってもらう。

心配なのは向こう。

ひなたを中心に、岩田、野口、佐野。

何だか、変な人ばっかり。

呑気に笑ってそう。

それはさて置き、そろそろ試合が始まる時間。

まず始まったのは、高須の試合。

相変わらずのロブによる安全な試合の流れ。

相手は初心者なのか、同じように返す。

「高須の試合長い」

上甲はそう言って、自分の水筒の中の飲み物を飲み始めた。

「それお茶?」

「ん…」

上甲は水分補給をしたまま頷いた。

「お茶は、体力消耗しやすいんだとか」

「ゴホッゴホッ」

上甲はむせた。

「それ、もっと早く言うべきじゃね?」

「ごめん、ごめん」

何やってんだか。



途中から上甲の試合が始まり、また数分後には要の試合も始まった。

私は期待と不安の中、要の試合を見届ける。

右利きの要は、右手首にリストバンドをつけている。

いつもの黒いリストバンド。

「要…」

要のあれを見ると、不安になる。痛いかな。



試合の中盤。5ゲームが終わったところ。

4-1で要が優勢とは言え、相手はたった今、1ゲームを取った。

今のゲームの辺りから段々と、要の球が遅くなってる気がする。

どうして?もしかして…。

試合中、監督なら奇数のゲーム毎にアドバイスが出来る。

でも、マネージャーは違う。ましてや、女子生徒。

男子の試合中にコートやベンチに行くことは出来ない。ただコートの外から応援するだけ。

何も出来ない。
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