えみだま

打球と手首

放課後まであと2分とみた。

先生の話を聞かずに、時計を見ている。

5人が部活入ってから、もう1ヶ月半かな。いや、まだ半ではないのかな。

5人とは関係ないけど、先週の要はカッコ良かった。

相変わらずのジャックナイフだね。

あの細い腕からのバックハンドとは思えない威力だよ。

マークの偶然っぽいストロークに対応したことも、打ったコースも、その後の言葉も。

少し休みなよ。

あの後マーク、ひかるに起こられてたなぁ。

それも可哀想だったけど、取り残された智士も可哀想だったよ。

うん。

あ。

チャイムが鳴ったら部活~。

「ひかる、行こっ」

「ごめん、先生に呼ばれてて、遅れる」

申し訳なさそうな顔された。

「またなのか~。襲われないようにね」

「何の話よ」

今度は呆れ顔。

「先生と生徒の禁断の…」

「じゃあ、行くから。変なこと考えてニヤけないでよね」

ツンツンしてるなぁ。いつデレるやら。

「行ってらっしゃいと行ってきま~す」

「はいはい」



部室前到着。

「今日は晴れだね~。いや曇り。ん~やっぱり雨」

「降ってねぇよっ」

部室を出た泰稔。ツッコミは今日も冴えてる。

「あ~めあ~めふ~れふ~れ」

「降らすなよっ」

次に部室を出た紅祐は、ご機嫌なご様子で。

まだ部室にいるマークは、ツッコミにキレが出て来始めたかもしれない。

「あれ?」

部室を見渡すと、一志と智士がいない。

要は既に準備万端。

「2人はどうかしたの?」

「呼び出し」

「そりゃぁ仕方ないね」

本気だったらマズいけど。

「いやいや、掃除だから」

やっぱり。紅祐がちゃんとツッコむの待ってたよ。

「とりあえず、先に行こうか」

泰稔、マーク、要、紅祐の4人と一緒に、コートに向かった。

今日も楽しい部活が始まる。

かと思ったところで、要が声を掛けてきた。

「先生いない?」

いつも低い声なのに、さらに低い声。

「今日?いないよ」

「代わってもらえない?」

要は最近どうも手首の調子が悪いみたいで。

「まだ痛むの?」

「少し」
< 9 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop