私立聖ブルージョークス女学院
 その日の午後は緊急職員会議だった。もちろん議題は今朝の痴漢騒ぎだ。年頃の女の子を大勢預かっているわが校として、鉄道会社に何か要望を出すべきか、という話になった。
「しかし、既に女性専用車両が導入されておりますし。わが校の生徒のためだけに民間企業である鉄道会社にこれ以上の要求をするわけにもいかないのではありませんかな……」
 校長がそう発言すると僕も含めて先生全員が頭を抱えてしまった。確かにその鉄道はわが校の生徒専用の路線というわけではないから、今以上の事をやってくれとも言いにくいだろうな。
 すると突然、綾瀬先生が挙手して発言を求めた。
「この際、考え方を根本的に変えて見るべきではないでしょうか?」
 校長は一瞬面食らったようだが、気を取りなおして綾瀬先生に説明を求めた。
「ほう。何かいい考えがおありですか?」
「はい。そもそも痴漢というのは、人間の動物的本能によって引き起こされる行為です。それを無理やり押さえつけて防ぐにはどうするか?これが例えば女性専用車両などの発想ですわね?」
「まあ、それはその通りですな」
「ですから、その発想自体を転換してはどうかと思うのです。ちょっと失礼」
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