サヨナラをいうまえに
わたし~美優~
笹本美優。

それが私の名前だ。

随分と欲張った名前だと思う。

美しく優しい娘に、と父親が決めたそうだ。

名前にふさわしい人間に成長しているかは……。


かなり怪しい。自覚あり。


花の17歳としては、あまり有意義な青春を送っていないと思う。

だって今現在、こうして病院の一室で絶対安静を指示され、無駄な時間を過ごしているんだから。


私は私立の女子高に通っている。

一応、お嬢様学校と呼ばれている学校らしい。

まぁ、ある程度、収入のある家の子が入るような学校だと思ってもらえれれば話は簡単だ。



誤解のないように言っておくが、私は意外と頭の回転がいいらしい。

今の学校も、入学するのがかなり難しいと知ったのは合格発表の日だった。

同じ学校の子たちが、涙を流して私を睨んでいたのを覚えている。

真っ赤な瞳は私を恨むような力を持っていた。



……確かに睨みつけたくもなるかもしれない。

でも彼女たちが犠牲にしてきた自由という時間は私だって同じだ。

小学5年の夏以来、入退院をくり返し、楽しみの学校行事に出られないことも数多くあった。


病院のベッドで暇つぶしに参考書を解いて受験した私と、毎日のように塾通いをして、寝る時間までけずって受験したクラスメート。

大きな違いだというかもしれないが、根本的なところは同じだと思う。

まぁ、私だけがそう思っているだけかもしれないけど。



不自由な生活にはいい加減なれた。

今では、この入院という期間を楽しんでいる。




私の病気は喘息だ。

な~んだ、とか思わないでほしい。

小児喘息はわりと大人になると治りやすいと言うけれど、私の場合、ちょっとそのへんが微妙だったりする。











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