インサイド
 星は仰ぎ見る。

手には温もりを求める。

無意識の贅沢。

空に星を見ることを、誰に邪魔されようものか。

手に取りたい温もりの方には、どんな多難が待つだろう。


「だめー。なんか違う。明日、また弾いてもらおう」

 大きな声が部屋にあふれる。

静まったころに、千帆は顔をふっと緩め、


「やさしい音」

やさしい曲。

つぶやいて、その曲をまた弾きだした。

同じようには弾けなくとも、近付くことはできる。

しかし千帆は、千帆の耳が聴きたいと思っているものにはたどり着けない。

なぜなら、それを弾くのはおまえじゃないからだ。
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