インサイド
千帆をどう運んで行きたいのか。

裕明の目指す先がわかるだけに、今回の選択が危ういものに思えてならない。

敢えてぶつける、それは必要なことなのか。


 羨ましいと思い、彼のように弾きたいと思う。

明らかに要素が欠けているというのに、段階を踏むこともせず、これは粗暴とまで言えそうな企画ではないのか。

 被る高波の予感に震え、たった今、切れる前の音が幾度も頭の中で鳴っていた。

 裕明。

彼の失敗は、最悪の場合、オレには終止符になる。扱っているものがピアノなだけに、これはなんとも真実の意だ。


千帆がピアノを、切り離すこと、あきらめること、触れない、弾かない――
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