はつこい・いちご【短編】
「今日、タワレコ寄ってかない?」

「あたしパス、今日この後ライヴ行くもん」

「マジ? うっらやましー」


教室のカギを、リーダーが閉めてから、

私たちは下駄箱に向かった。


さすがに夏休み中だけあって、廊下や教室にいる人の数が少ない。


ミーン、ミーンと鳴くセミの声が少し響いたかと思うと、

すぐにピタリと止んだ。


ゴロゴロ……。



遠くで、低く雷鳴がとどろく。


「どうしよう、私傘もってきてない」


ちょっと前まで晴れてたし、

天気予報でも雨は降らないと言っていた。


だから、リーダーが言ったことも正直、

信じていなくて、

やった、早く帰れるラッキー、

くらいにしか思っていなかった。


ヤバい。


これは、多分マジでくる。

ってゆーか、降る。

ドシャーっと。



「穂純、天気予報確認してないの?」

エリが私の顔を覗き込む。


「したよ。朝テレビ見たけど、

雨降るなんて言ってなかったし」

ため息をつきながら愚痴ると、


「ケータイでは10時ごろから、

にわか雨が降るかもって書いてあったよ…」



レイがさっぱりと言った。


「マジで!?」


私はビックリして、レイとエリと交互に顔を見やる。


二人とも、何か驚いてるというか、

ちょっとバカにしたような表情をしている。


「穂純ってさ、ひょっとして

ケータイの天気予報までは見ない方?」


流れる髪をかき上げながら言うのはレイだ。


「ウン…だって、メンドくさいんだもん」
< 12 / 36 >

この作品をシェア

pagetop