はつこい・いちご【短編】
3.ボール
「穂純…ごめん、あたし」


エリが今まで見たこともないような、
とても悲しそうな表情で、私に謝ってくる。


…別に、エリは悪くなんかない。


本当のこと。
だからそう言おうと思ったのに、
なかなか口が開かない。


おかしいな。


しゃべれない。



「穂純?
………」


エリがギュッと私を抱きしめる。

何故か顔の周りに腕が巻き付く形になって、
私が顔を動かそうとすると、エリの腕がさらに巻き付いてくることに気付いた。


そんなことを繰り返していると、
エリの制服が濡れていることにも気づく。


…ああ、泣いてるんだ、私。
そんなことには、全然気が付かなかった…。
< 21 / 36 >

この作品をシェア

pagetop