甘くないコーヒー
帰り道はオレが運転した。

明日見は、ずっと空を見ていた。


「光ちゃん。今日は、ありがとうね。」

まだ鼻声だった。

「いいよ。お礼なんて。時間はいくらでもあるしな。」

極めて明るい口調で答えた。


「おばあちゃんさ…ある日突然、いなくなっちゃったんだ。仕事から帰って来たら、おばあちゃんいなくて。探し回ったら近所の人が病院に連れて行ってくれたの。」


ここで鼻をすすった。


「私が着いた時には、いなくなってたんだよ。まだ、温かかったのに。」

明日見は、“死んだ”という言葉を使わなかった。

「私の前から皆、いなくなっちゃうんだよ。私、何か悪い事したのかなぁ?」


「オレは、いなくならないよ。」


オレの言葉を聞いた明日見は、力なく微笑んだ。

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