甘くないコーヒー
シートベルトを締めて、エンジンをかけた。


すると、何だか急に悲しくなった。

私は上手く感情がコントロール出来ない。

「お前は感受性が鋭過ぎるんだよ。」

おばあちゃんに言われたっけ。


また、涙が溢れてきた。
ハンドルに突っ伏して泣いていると、窓をコンコンと叩かれた。

顔を上げると、心配そうな顔をした光一朗だった。


窓を開けると、私の白い財布を差し出した。どうやら、忘れていたらしい。


光一朗は泣いている理由を聞かなかった。

ただ、私の頭をそっと撫でた。

その感触は、優しい羽根のようだった。
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