夏の日の終わりに
 後日行われた教授回診。

 偉そうにふんぞり返る大教授様の後を、ゾロゾロと大勢の医師がついて回る大名行列だ。

 僕のカルテを手に取り声を掛けてきたのは、いつもの林医師ではなかった。ネームプレートには「教授」の肩書きが光っている。

「やあ、どうだね?」

(どうだね、って……誰だよアンタ)

 そのヒゲ面の教授がさらに上の大教授様にカルテを見せて状態を説明している。

 僕はそれを無視して林医師を探した。

(いた……)

 医師たちの頭と頭の隙間、病室の入り口付近に突っ立っていた。

 僕の回診が行われているというのに、興味なさげに下を向いている。

 ヒゲが手にしたネームプレートの名前、そう言えばどこかで見た覚えがある──

(ここか!)

 全く気がつかなかった。

 枕元にある担当医の名前が、いつの間にかすり替わっていたことに。

 まるで自分の手柄と言わんばかりに得意げに回復状況を説明するヒゲ。林医師は僕の目線に気がつくと、慌ててそっぽを向いた。

(そうか、そういうことか……)


 大学病院のシステムというのは、僕が考えている以上に複雑なものらしい。

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