lacrimosa
別に恋愛や性的な対象として弟を見たわけじゃない。
ただ、そんなことは関係なく、今まで知らなかった弟を前にして恐くなったのだ。
―――自分から離れていくようで。
上手く、掴んでおけない気がして。
『僕、やきもち妬いた』
「…え」
『今きっと、やきもち妬いた』
「……」
『だって、リュカは…、リュカは、僕だけの傍に居てほしい』
アンジェロが泣いた。
顔を歪めて泣いた。
リュカにはそれがわからない。
『いけないって、わかってるよ。僕は天使だもの。
…でも、寂しいよ。寂しいんだ』
「……」
『僕だけのものが欲しいんだ』
父も母も、最終的にはアンジェロではなく他の何かを一番に思って消えた。
―――だから
『リュカ、リュカ、』
縋りつくようにリュカにしがみつく。
(…アンジェロ)
その時リュカは思った。
アンジェロが自分に言った言葉、あれはアンジェロ自身に当てはまることだったんじゃないかと。
誰かに一番に愛してもらいたい。1人になるのが恐い。
それは他でもなくアンジェロが一番強く感じていることなのではないかと。