妹神(をなりがみ)
「江戸時代の初め、薩摩藩に侵略され力づくで属国にされ、何もかも奪われ奴隷のように働かされた!明治になって琉球王家はヤマトの一存で消滅させられ、大日本帝国の一部とは名ばかり、差別され蔑まれ虐げられる、そんな暮らしは変わりはしなかった!大戦末期の米軍の侵攻では本土から見殺しにされた。三か月も続いた鉄の暴風・・・山の形が変わるほどの砲撃と爆撃の下で何の罪もないウチナンチューが何十万人も死んだ。生きのびた者も親を子を家族を失い、家も財産も全て失い、けれどヤマトンチューは気にもしなかった!」
 美紅の棒が初めて純のお母さんの体に当たった。彼女はそのままウタキの端の木に叩きつけられる。やっと立ち上がった彼女に美紅の追い打ち。美紅は叫び続ける。
「やっと戦争が終わっても、その仇の米軍に沖縄ごと売り渡され、ヤマトが独立を取り戻した後も憎い米兵に蹂躙されながら生きてきた!日本に返還されてやっとアメリカ世(ユー)からヤマト世(ユー)に戻ったと喜んだのもつかの間。いつまで経っても基地はなくならず、本土より貧しい暮らしは変わらず、どれだけのウチナンチューが人生を狂わされてきたか!あなたこそ沖縄の何を知っている?ウチナンチューの何を知っている?あたしたちの何を知っているというの!」
 美紅の言葉に俺はまた打ちのめされたような気分になっていた。あの陽気で人の良さそうな人たちの住む、何もないけど平和で穏やかな島……俺は美紅を通して沖縄と言う土地をずいぶん理解したように思っていた。でもそれはとんでもない思い上がりだった。
 沖縄にそんな悲惨な歴史があったなんて。それに米軍基地の問題は今でも続いている。俺が知ったのは沖縄のほんの一部、それも上っ面の一部でしかなかったんだ。
< 110 / 128 >

この作品をシェア

pagetop