妹神(をなりがみ)
 美紅は少し顔をしかめてさっきより大きく頭を横に振った。
「あたしは苦手。ヤギ汁ってなんていうか匂いが強烈で」
 それを聞いた絹子がほっとした表情で子ヤギの首から腕を離す。しかし美紅がすぐにこう続ける。
「あ、でもヤギ刺しは食べられない事はないかな」
 絹子は再びガバっと子ヤギに抱きついた。引きつった笑いが完全に顔に張り付いている。
 いや、絹子、そこまで心配しなくても。いくら美紅でも今この場でその子ヤギを頭からかじったりはしないだろ。ううん、しかしヤギの肉を食べる国はあるとは思ったが、日本の中にあったとは!沖縄の食文化、あなどれん。
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