たとえばの明日に花束を



天音が来た。

その顔を見るだけで俺はドキドキと胸が高鳴ってしまう。



「……あぁ」

「これお花ね。生けておくから」

「……あぁ」

「それじゃあ、私、用事あるから帰るね。ばいばい!!」


天音は花束を生けるとすぐ帰った。

……話したかったな。



天音が出て言って五分後、沢渡が部屋を訪れた。

沢渡が気付いたのは花束だった。


「何これぇ?勿忘草……あぁ、天音ちゃんかぁ」

「どうして分かった?」

「だって勿忘草の花言葉はねぇ。


"真実の愛"とぉ、"私を忘れないで"なんだよー?



だから天音ちゃんかなっ、て」



花言葉だけで俺の胸は躍った。天音がもしかしたら俺を想ってくれている。





なぁ、天音。


そんな期待寄せても――いいよな?
< 32 / 56 >

この作品をシェア

pagetop