たとえばの明日に花束を



プルルルル……

プルルルル……


あれから病室を飛び出して、泣きながら走った。

胸が苦しい。

記憶の中の志紀じゃない。あれはもう、私の知らない志紀だった。



『はい、もしもし。』


麗子の声が機械越しに耳に届く。



「れ、い…こ…」

『天音…あんた、泣いてるの?』

「助けて……グスッ…」

『今からすぐ行くわ。場所わかる?』

「小泉商店街…」

『分かったわ、待ってて』



プツッ

ケータイの真っ暗なディスプレイを眺める。この画面が私の心を映しているようで、なんとなく笑いがこぼれた。





―ププーッ!


「天音、乗って!」

「麗子……」


黒塗りのリムジンのクラクションと共に麗子の声が聞こえた。

振り向くと顔を出す麗子。



「麗子ぉっ……!!」


私はリムジンに飛び乗って、麗子に抱きついた。
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