冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 むにゃむにゃ。

 口の中で、何かカイトが呟いている。

 それが、頭の側で聞こえるくらいの胸の中。
 彼女の想像などぶち破るような腕の感触が、自分を抱き寄せているのだ。

 冗談ではなく、カイトの鼓動が聞こえた。
 乱れる様子もなく、ただトクトクと繰り返す。

 自分が、夢を見ているんではないだろうかと不安に思える。
 こんなに自分に都合のいい夢はなかった。

 まるで恋人同士のような――

 それを思った瞬間、メイの魔法は解けた。

 余りに悲しいことに気づいたのだ。

 結局、何をどう思っても感じても、いまこうやって抱きしめられているのでも、単なる物理的結果に過ぎないのだと分かったのだ。

 無意識に抱えて眠る枕と大差ないのである。

 心がないのでは、人形と同じ。

 彼女は、目を伏せながら身体をはがそうとした。

 けれども。

 カイトは、彼女をしっかり抱きかかえている。

 あ…離して。

 一度落ちてしまった心は、なかなか登らない。

 しかし、彼の腕はしっかりとメイを抱きしめ眠り続ける。

 決して乱れない呼吸と心拍数の中で、彼女はずっと目を閉じることが出来なかった。
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