冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 呆れられてもしょうがなかった。

 でも、やっぱり心配になって、おそるおそるハルコの表情を伺う。

 あら?

 メイは首を傾げた。

 自分が予想している結果とは、何か雰囲気が違っていたのである。

 ハルコは、物凄く嬉しそうな顔をしていた。

 目なんか、キラキラ輝いているのだ。

「まあ、そうなの!」

 声も嬉しそう。
 何がそんなに嬉しいのだろうか。

 カイトが朝食を食べたことか。バイクで出勤したことか。

 付き合いが浅いメイには、よく分からなかった。
 一番可能性が高いのが、朝食ではないだろうか。

 ハルコもいままで、彼の食生活を心配していたのかもしれない。
 そう考えるのが、一番自然だった。

 もしそうなら、自分のしたことがいいことのようで嬉しい。

 ハルコの嬉しそうな笑顔に、メイもちょっと笑って返した。
 すると、もっと彼女は嬉しそうな顔になる。

 よかった。

 シュウという人は、どうもメイの行動を煙たく思っているようなので心配だったのだ。

 だから、ハルコの好意的な反応は、とてもほっとできた。

「そう…この寒いのにバイクで」

 メイの安堵をよそに、楽しそうな笑顔でハルコがそれを呟いた。

 寒そうな。

「あっ!!」

 瞬間、キーワードが記憶と接触して、正面衝突した。

 思わず大声をあげて、メイは席から立ち上がってしまう。

 ガチャンと揺れるカップは、幸いにもその衝撃に倒れたりしなかったけれども。

「ど、どうしたの?」

 いきなりの反応に、ハルコが驚いた目を向ける。

 そうなのだ。

 今日は、寒いのだ。しかも、とても。

 なのに――

 メイは、今朝の彼の姿を思い出した。背広だけだったのだ。
 あんな服装では、息が真っ白になる寒さの中では、何の防寒にもならない。
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