冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 んなワケねーだろ!

 内心で、カイトは彼女を責めた。

 さわれねぇ、まで思った彼を捕まえて、ひどい濡れ衣を着せるものである。

 理不尽な気分が、彼の回りを取り囲む。

 ムスッ。

 毛布の中に潜り込めずに、カイトは不機嫌な顔になった。

 ここで。

『何にもしねーよ』

 と言えればよかったのだ。

 それだけでも、きっと何かが変わったハズなのに、カイトは言えなかった。

 ただ、彼女の脅えに怒りを感じるだけなのだ。

 何で、オレが、オレが……オレが!

 焼け付くような衝動がわき上がった。

 彼女の背中を、見つめているだけなのに。
 何も言葉を交わしてもいないのに。

 ただ、彼女の自分に対する扱いが、ひどく気に入らないのだ。

 怖がんなよ!

 何で、オレを怖がってばっかなんだよ!

 怖がらせたいワケじゃないのだ、カイトは。

 何もしてないのに――いや、衝動的に抱きしめてしまったのと腕を掴んだのと、確かにそのくらいはあったけれども、実質的には何もしていないに等しい。

 それなのに、どうして彼女はカイトを怖がるのだ。

 不安そうな目をして。

 取って食われるとでも、思っているのだろうか。

 取って。

 ジリッ。

 手が。

 熱いような気がした。

 まるで違う生き物だ。

 触れた彼女の感触を、また彼は思い出してしまったのである。

 手じゃなくて、腕もその感触を覚えたがっていた。

 胸も――手から伝染していくかのように、熱い感触が伝わっていく。


 分かった。

 分かったら、愕然とした。
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