冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 ビクンッッ!

 カイトは、強い落下感で飛び起きた。

 イヤな汗をいっぱいかいている。

 怖い夢を見たような気がした。

 もう覚えていない。

 これ以上、寝ているのがイヤになって、ベッドから身体をひきはがす。

 本当は、会社に行きたかったのだが、行く気力がわかない。

 シュウが出かけていなければ、車があるはずだ。
 なくてもバイクがあるはずだ。

 けれども、階段を降りてそこまでたどりつき、エンジンをかけて寒く忌々しい街を通り抜け、会社にたどりつく―― とてもじゃないが、いまのカイトは出来そうになかった。

 彼は、そのままノートパソコンの前に座った。

 会社で作りかけのデータは、サーバーに入れているのだ。

 ここからでも扱えないことはない。

 今までだって、別に休日出勤する必要性は何もなかったのだ。

 ただ、この空間にいたくなかったのである。

 開発室の、パソコンに向かう以外にないという、脅迫的な空間にいた方が、よほど気が楽だったのだ。

 この部屋には、ゴーストがいるのだから。

 シュウの置いて行った栄養食品は、そのノートパソコンの机の上に乗っている。

 それを、全部ざらっと机から落とした。

 邪魔だったのだ。

 スイッチを入れる。

 立ち上がったら、そのまま回線で会社とリンクした。

 データをロードして作業を始める。

 MAPを作りかけていたのだ。

 このゲームは。

 カイトは、新しいゲームを作り始めたはいいが、まだ考えていないことがあった。

 このゲームは、すべてクリアしたらどうなるのか。

 要するに、人間側が最後の化け物を倒し勝利した後どうなるのか、ということである。
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