冬うらら~猫と起爆スイッチ~

12/30 Thu.

●164
 自動ドアの向こうに―― ハルコがいた。

 それが、昨日の夕方の出来事。

 あの瞬間、メイはとても驚いたのだ。

 まさか、こんなに早く見つかってしまうとは思っていなかったから。

 彼女一人ではなく、ソウマも一緒だった。
 何も変わらないあの夫婦が、自分を見ていたのだ。

 ハルコが駆け寄ってくる。

 メイが、彼女の身体を心配するより先に、いろんな言葉を投げかけられた。

 突然の再会に、お互い戸惑っていた。

 しかし、メイは仕事中だ。

 たとえ事情を説明してくれと言われても、いまここで話すことは出来ない。

 いや、どこに移動したとしても、どう説明をしたらいいのかなんて分からなかった。

 ただ。

 ここ数日、胸に靄がかかっていた。

 その靄が何なのか、よく分からない。

 巡査さんに、あの居酒屋に連れて行ってもらった日から―― いや、実はもっと前から小さな石が胸にあったのだ。

 その靄を解きたい気持ちはあった。

 でなければ、きちんと眠れそうになかったのだ。

 しかし、その靄を解くには、彼女の持っているカギは少なすぎる。

 開けられるドアだけでは、靄はまだ依然深いままなのだ。

 だから。

 本当はメイも、ハルコと話したかったのかもしれない。

 こんな形で、それが叶うとは思ってもみなかったが。
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