冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 神経の上を、ガラスでつま弾くような痛みが、全身にピンボールする。

 な、な、何なんだ、こいつらはー!!!!

 まだ首筋の毛が逆立っているような気と、まぎれもなく痛みを残す頬と脇をそのままに、カイトは2人を睨んだ。

 笑顔ではあるけれども、絶対。

 ぜってー、怒ってやがる。

 理由が考えられるのは、彼が栄養失調などという病名で倒れたこと。それくらいだ。

 しかし、そんなのはカイトの勝手である。

 いやなら放っておけばいい。

 殴られたり、つねられたりするいわれは、まったくなかった。

 このまま2人の近くにいたら、そのうち撲殺されるのではないかと思ったカイトは、違う方向へ歩き始めた。

「おい、どこへ…!」

 ソウマが声をかけてくるが無視する。

「帰るなら送っていくわよ」

 ハルコの声も無視だ、無視。

 あの2人の車に乗せられたら、どこに連れて行かれるか分かったものではなかった。

 たとえ、自宅に送ってくれたとしても、その後も上がり込むに決まっているのである。

 彼は、最初から会社に行くと決めていたのだ。

 それを彼らに言うと、また顔とか脇の心配をしなければならないだろう。

 だから、黙って行くに限る。

 病院の敷地を出ると大通りだ。

 カイトは、後ろから車に乗り込んで追いかけようとする2人の気配を振り切って、タクシーを拾った。

「鋼南電気」

 タクシーの運転手は、その言葉で理解した。
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