冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 とっとと書けっつってんだ!


 しかし、いま短気を起こしては、2人の証人を失うことになる。

 そうしたら、また別の2人を探さなければならなくなるのだ。

 手間をかければかけるほど、彼女との婚姻契約の受理が送れてしまう。

 ムスッとしたまま、カイトは家にあがった。

 ソウマだけならここで書かせるが、相方のハルコは身重なのである。

 書いて欲しいならば、ソウマの言うことに従わなければならなかった。

 心の中では、今にも彼に噛みつきそうに、ガルガル言っているというのに。

「どうしたの…あら!」

 居間の方から出てきかけたハルコが、驚いた声をあげる。

 戻ってきたソウマと、突然の訪問者たちを見つけたのだ。

 居間に続くドアを開けて、彼らを招きいれようと動いてくれる。

 そんな彼女の横を通り過ぎて、居間に入るのだ。

「元気そうね…」

 ハルコが、目を細めて言った。

 カイトに――ではなく、その後ろのメイに向かって。

「あ、はい…あの時は、ありがとうございました」

 彼女が、慌ててお礼を言う。

 ぺこりと、頭を下げた感触さえあった。

 あの時?

 ピクリと、カイトの耳が動く。

 自分の知らない時に、この2人は出会っているようだった。

 メイは、この家まで知っている。ということは、きっとここにも来たことがあるのだ。

 ムカムカ。

 その事実が、面白くなかった。

 多分、2人が離れて過ごしている間の出来事なのだろうが、それでも面白くなかったのである。

 カイトの歩みが、前よりも乱暴になったが、もう目的地まではそんなに遠くもない。

 すぐにソファに招待されることになった。
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