それでも朝はやって来る
「この匂いは……


桜小路のものですね」


顎に手を当てながら、真楯が首を捻る。

少しばかり腑に落ちないようだ。


「確か、今の当主は御年80歳にもなるご長寿だった気が…」


「ああ、あそこの跡取りは俺が全部倒しちまったからな」


悠里は、奥歯をギリリと噛み締める。


「あのじじいは、朝子を誘拐したたりしないはずだ」


「では、どなたが?跡取りはいないのでしょう?」


「…………」


少し悠里は考えると、


「いや、確か…五男の妾の子がいたはずだ。爺が言っていた」


真楯が少し驚いて、悠里を見る。


「女だから気にすることはないと思っていたが、


間違いだったな」


悠里は目を閉じて、軽率だった己の行いを嘲笑った。


「ついに橘家以外も乗り出してきやがったな」


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