君を探して
東雲に「もういいよ」といったところで、教室のドアが開いて担任が入ってきた。

「おまえら席に着けー」

そう言ったのは、滝田先生。

担任でもあり、私が所属する吹奏楽部の顧問でもある。

27歳、独身。男。

いつも同じ、少しくたびれたスーツを着ていて、年季を感じさせる黒ぶちのメガネが、あっさりした顔の上で一段と存在感をみせている。

なんていうか、何事にもやる気がないというか、頼りないというか。
熱血教師とはまさに対極の存在だ。


「授業するぞー」

言葉にも全然迫力がないから、当然、生徒はなかなか席に着かない。

そして、いつまでもざわついているその様子を、滝田先生は黙って見ているだけなのだ。

(ガツンと怒ればいいのに!)

全く、こっちがイライラしちゃうよ!


一瞬、先生と目が合った。

私が

(コ・ラ・ー!)

と怖い顔をして口パクで言うと、先生は頼りなげに苦笑した。

日頃から下がり気味の眉毛が、いっそうハの字の形になる。


はぁ……。


「ほらもう! 東雲もケータイやめて!」

私は半ば八つ当たり気味に、東雲からケータイを取り上げた。
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