君を探して
しばらくの間外で頭を冷やしてから部室へ戻ると、あんなに活気のあった部室にはすでに誰も残っていなかった。

私、一体どれだけ外で呆けていたんだろう……。

「……慎も帰っちゃったのか」

今日は、塾はない日のはずだけど。

合奏でしごかれて疲れちゃったから、私と話をする気力もなかったのかな?


それとも……エリナと帰った……とか?


私は椅子に座って、カバンから携帯を取り出す。

新着メールは届いていなかった。

“オレ”は、滝田先生じゃなさそうだよね。


携帯のボタンを押して、メールの新規作成。

送信相手は……“オレ”。

<おーい>

それだけ書いて、送信。


ねえ。もう学校出た?

部活はなにもしていないの?

もちろん生徒だよね。何年生?

家は近いの? 遠いの? 電車通学?


……なんだか1人は寂しいよ。



だけど、結局、家に帰り着くまで“オレ”からの返信はなかった。

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