君を探して
私たちは無言のまま歩き始めた。


陽人が、私のことを気にして迎えに来てくれたのは明らかだった。

きっとチョコから、私が今日慎と話をすることを聞いたのだろう。
心配だから様子を見て来い、とでも言われたのかな。

だけど、陽人は難しい顔をして、何も聞かず……ううん、何も聞けずに、私の次の言葉を待っている。


だいたい、どう考えても、陽人がこの状況下でうまく対応できるとは思えない。

そしてそれは私も同じで。何を話していいのか分からずに、陽人の歩調に合わせてゆっくりと歩くだけだった。


そのまま沈黙の時間は続き、私たちはあっという間にマンションの前までたどり着いてしまった。

エレベーターはすでに1階で待機していて、そのまま私たちを5階まで運んでくれて。

気がつくと、もうそこは家の前だった。



難しい顔をしたままの陽人。

──このまま何も話さずに終わるのかな?

そう思っていると、ようやく陽人が口を開いた。

「深月…その……大丈夫か?」

私は精一杯笑った。

「うん、大丈夫!」

陽人はやっと、少しだけ緊張が緩んだ表情になった。

「じゃぁ……また明日な」

「うん。またね」


ありがとう。

たったそれだけの会話だったけど、不器用な陽人の精一杯の気持ち、ちゃんと伝わったよ。

ホントに、ありがとう。


そう思いながら、私は家へ入った。



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