シーラカンスの唄


「シーラカンス…。」

「あぁ。」

追いついて来た翔も隣でシーラカンスを見た。

「可愛くないね?」

「そうだな。」

(何でアイツはこんなのがいいんだろう?)

思わずフッと考えてしまう。

「こんな顔で唄っても振り向かないな。」

「確かにそうかもしれない…。」

翔の言う通り、とてもクジラやイルカと一緒には出来ない。
歌なんて唄ってもこども達も逃げるに違いない。

水族館を堪能して外に出ると、空は星が零れそうだった。

―ヒュー……バンッ!

「え?」

背後が明るくなって見上げると夜空に大きな光の花が咲いていた。

「これも知ってて連れてきた。」

翔は得意げな顔をする。
いつも彼には本当に驚かされてばかり。

「なんかずるい…。」

「ずるくない。」

嬉しそうな顔を見ると私まで嬉しくなる。

「あぁ、あとこれもやる。」

「え?」

彼が差し出した小さな箱を開けると、イルカのペンダントがあった。

「イルカやクジラは唄うからな。」

ちょっと照れくさそうに、自分のカバンを指す。
そこには同じイルカがいた。

「バカ…。」

「悪かったな…。」

そんなところが好きだなぁとまた思ってしまう。
やっぱり私は絶対幸せ者だった。


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