シーラカンスの唄


《もういいよ。》

(あ…。)

翔を完全に怒らせてしまった。
そう思った時にはもう遅かった。

(電源まで切ってある…。)

喧嘩をする事もあるけど、こんな感じは初めてだった。

(どうしよう…。)

どっちつかずな自分に嫌気が差した。
不意に目に入った、壁に掛けてあるイルカのペンダントは哀しい歌を唄っている気がした。


どうして逢ってしまったんだろう?


逢わなければ、こんなことにはならなかった。
逢わなければ、幸せでいられた。


それなのに…


逢えて嬉しかった自分も居た。
逢えないより逢えた方がいい、そう思う自分も居た。


だけど…


大切な人と逢えなくなってしまった。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

シーラカンスは深い海で唄う。

誰にも届かない場所で。
大切な大切な気持ちを。
大事な人に届けるように。

きっと伝わることを祈って…

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

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