【短編】優しい、嘘つき
あっという間にその日は来た。
厭味なくらいに澄み渡った青空を見上げ、ため息をつく。
すると吐き出された息が、白くふわりと宙に浮かんだ。
『元気でね』
『向こう行っても頑張れよ!』
『幸久(ユキヒサ)、またな』
口々に交わされる会話が、どこか遠くに聞こえた。
――――ゆーくんが、行ってしまう。
いつも傍にあった温もりが、行ってしまう。
愛しい人が…行ってしまう。
もっと寂しくて、辛い気持ちばかりになると思っていた。
なのに、どうしてだろう。
涙が、出ない。
自分の冷静さに驚く。
私って……
こんなに淡泊な人間だったんだ…
ゆーくんが行っちゃうのに。
遠くへ行っちゃうのに。
少し離れた所から、みんなに囲まれているゆーくんを見つめた。