三度目のキスをしたらサヨナラ
「どこで会う? ……部屋? 5階の501号室……」

さっき彼女の写真を見せてもらったりしたもんだから、余計な想像力が働いて、2人の会話はやけにリアルに聞こえた。

話を続けながら、ソウは私の後を追いかけてくる。

携帯を耳にあてて彼女の話に相槌を打ちながら、こちらを心配そうに見つめるソウ。

そして、それから逃げるように早足で歩き続ける私。


──どうしてだろう?

さっきはあんなに怖かったのに。
今は防波堤の上を歩くことに全く恐怖を感じていなかった。

それよりもただ、早くその場から立ち去りたくて、ソウに追いつかれたくなくて……。

私は、じっと足元だけを見つめながら早足でドラム缶の階段まで戻った。


そして。

ソウが電話を切って慌てて私に手を差し延べたのは、私がグラグラ揺れるドラム缶から飛び降りて、無事に地面に足をつけた後だった。

「ソウ、帰ろ!」

私は笑ってそう言った。
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