三度目のキスをしたらサヨナラ
そんな彼に見とれていると、ウーさんが瓶ビールを抱えて店内に戻ってきた。

ウーさんと目が合うと、私は無言でウーさんの持っているビールを指差した。

そして、目線だけを、ウーさんから泣いている彼へ移す。

ウーさんはそれで私の言いたいことを察してくれたようで、黙って一度うなずくと、冷蔵庫から冷たいビールとグラスを取り出して、彼の目の前に置いた。

「どうぞ」

うつむいていた彼が顔を上げる。

ウーさんは冷えたグラスにビールを注ぎながら、

「あちらのお客さんからだよ」

と言った。


その言葉で、彼がこちらを向く。


彼は、とてもきれいな顔をしていた。

涙でうるんだその瞳は真っ黒で大きく、
鼻水をすする鼻は赤かったが、その形は高く鼻筋が通っていた。

「あ……あの……」

彼が何か言いたそうにこちらを見る。

私が黙ったまま軽くうなずくと、彼は目をぎゅっとつぶり、下顎を引いて奥歯をぐっとかみ締めた。

大粒の涙が彼の頬を伝う。

「いただきますっ……!」

グラスを目の高さまで掲げ私に頭を下げると、彼はグラスに注がれたビールを一気に飲み干した。



──こうして、私たちは出会った。




< 13 / 226 >

この作品をシェア

pagetop