三度目のキスをしたらサヨナラ
私は足下に置いた鞄に目をやった。

「連絡先……」

そして、鞄に手を伸ばして、携帯を取り出した。


思い出すのは、漁港に行った帰りの駅前ロータリー。

ソウは私の携帯に自分の番号を入力して、こう言った。

『何かあったら、いつでもかけてきて』
『俺、絶対電話とるから』

それは、いつもの調子とは違う、真剣な言葉だった。


そんなソウの言葉は、ずっと私の心の中から消えることがなくて。


それは──あの時私が消せなかったソウの携帯の番号と同じで。



携帯のアドレス帳を開くと、あいうえお順にソートされた一覧が表示される。

「あ」から順に並んだタブを次々と進め、一番最後の「その他」タブを開く。

そこに登録されているのは1件だけだった。

表示された名前は“名称未登録”。

それは、ソウが教えてくれた番号。


あの時、私はこの番号をどうしても消すことができなかった。

だけど、登録しようにも、“ソウ”とも、“海”とも登録できなくて。

『……かけることなんてないのに』

そう思ったのも嘘ではない。

だから、ただ、そのまま登録ボタンを押した──。


まさか、この番号に電話するときが来るなんて。

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