牙龍 私を助けた不良 上
心奏、震える体


* * * * *


あの頃は、ただ真っ直ぐにあの人のようになりたいと願い、強く思った。


人生で初めて憧れた強い女(ヒト)は、今では、初めて好きになった女(ヒト)になっていた。


守りなんてなくても、自分一人で敵を蹴散らしてしまうような彼女は、今は、どうしているのか。


降り注ぐ雨に包まれたこの町の何処かで、きっと泣いている。


涙を流していなくとも、傷だらけの心は音もなく泣いているだろう。静かに、独りで。


彼女が泣いているというのなら、独りでいるというのなら、今すぐ傍に行きたい。


──凜華、約束は必ず守る。



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