嘘カノ生活
すると間宮さんはゆっくり、辛そうにしながらも自分の手を動かして、肩をさすっていたあたしの手を握った。

温かい間宮さんの手。

 
 
「死ぬかよ…!ごめんな朝未、ちゃんと話す、から…」
 

 
間宮さんはほとんど息のような声で、そう途切れさせながら言った。

それを聞いて涙が止まらなくなる。

何度もそれを拭って、頷いた。


あたしがふと顔をあげると、真っ青な顔をした沙織さんが立っていた。

震えて、息も荒々しい。

 

「ご、ごめんなさ…」



消えそうな細い声で言う。

はあ、はあ、と呼吸が重々しく、過呼吸かと思えるくらいだった。

 

「ごめんなさい…。ゆ、祐平、祐平…」

 
 
そしてまた彼女は、"祐平"と呼んだ。

親しいならば間違えるだろうか。

しかし彼女はそう呟きながらその場にうずくまった。

 
 
「あ…」



あたしはどうしたら良いのかわからなくて、何も言えなかった。

するとあたしの傍に居た間宮さんが、必死に顔を沙織さんの方へ向ける。

 

「沙織さん、も…終わろう?祐平…もう、帰ってこないんだから…」
 


そして先程と同じ様に息混じりで、普段の何倍も遅い速度で言った。


"もう、帰ってこない"

それを聞いてなんとなくわかったような気がした。

本当にただ、なんとなく。
 
 
沙織さんはそれを聞くと、強く目を瞑って涙を流した。
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