嘘カノ生活
そしてその1時間後、赤いランプは消灯した。

それは結果は何であれ手術は終了した、という事だ。

あたしと俊介くんの間に緊張が走る。

 
椅子から立ち上がり、中から人が出てくるのを待つ。

その間もうるさいくらい心臓は脈打っていた。
 
 
そして中から若い男の人が出てくる。

この人が間宮さんの手術をしたんだと分かった。

その医師はあたしと俊介くんを見ると、近づいてきた。
 
 
思わずお辞儀をすると同じ様にそれを返してくれる。

 

「あ…」



俊介くんはそれだけ言うと言葉を詰まらせる。

手元が震えていた。

それは動揺と不安を示す以外なかった。

 
 
ああ、あたしだけじゃない。

間宮さんを心配して、必要として、大事に思うのは。

だからこそ不安になるのも。

俊介くんはあたしを気遣ってずっと冷静な振りをしていたんだ。
< 252 / 321 >

この作品をシェア

pagetop