多々なる世界の〇〇屋【企画】
四:【迷子屋】

弓月(ゆづき)時乃(ときの)は、目の前の迷子に目をやった。

安陪(あべ)晴明(はるあき)という19歳の少年が、今回の迷子だ。

色白で艶やかな黒髪に赤い唇は女っぽさがあり、何よりも痩せているのが弱気そうに見えた。

暗い霧中を彷徨っていたら、いつの間にかここに来ていたのだ、と彼は言う。名前を聞いて時乃は暗い部屋の中で、時乃は「おお」と呟く。

「安陪晴明(あべのせいめい)と読めるね。読み方変えると」
「そう・・・言わないで下さい」

今年で14歳になる時乃は、小柄で、白いワンピースが目立った。

「僕さ、古典で一番好きなんだよ。今昔物語」

幼い顔で笑って見せてから、椅子から降りる。

「そのせいで、俺は中学の時からかわれましたけどね」
「何を言うんだ。誇ればいいじゃないか。安陪晴明と同じ字で書く名前なんて、羨ましいもんさ」
「狐の子供、なんてからかわれましたけど」

あらあら、と言いながら、時乃はすたすたと歩いていき、棚に手をかけると、和風のコップを手に取った。そして「抹茶ミルク」の粉をいれ、湯で混ぜる。

「平安なら日本、日本なら抹茶だ。ほら、飲みなよ」

時乃に渡された抹茶ミルクを少し飲むと、晴明はちらりと時乃を見据える。

全体的に白っぽく、不思議な少女であった。




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