空人1〜奇跡〜
2.帰り道の悲劇
はああ……また、だ。
勢いよく教室から飛び出す秋人の背中を見て、ふとため息をつく。
心の中に渦巻いている、後悔。
そう、私はただ『一緒に帰ろう』って誘いたかっただけ。
それなのに……。
秋人に馬鹿、とか言ってしまう。
思い返すと、私は秋人に対してそういうことばかり言っている。
本当の気持ちは言えないくせに。
秋人は私の幼なじみ。だから付き合いは長くて、今でもよく話したりしている。
けれど、いつからだろう。
秋人を好きになったのは。
今だって、本当は素直になりたかった。
でも。そんなの、私の性に合わないから。
今みたいに、秋人に突っかかったりしか出来ない。
私の靴が入っている下駄箱に手を掛けながら、気持ちを整理する。
秋人を幼なじみ、友達以上に捉え、意識し始めた私。
さっきは、ふと想いが高ぶって。
秋人に泣いている所、見られてしまった。
きっと秋人も、私を友達とか幼なじみとは思ってくれてるはず。
だけど、私は話しやすい女子とか、そういう存在で。
まさか私の想いまでは気付いていないだろうから。
……本当は、今すぐにでも伝えてしまいたい。
こんな苦しいのは、正直辛いし、嫌だ。今すぐにでも言ってしまいたい。
でも、そうすることで秋人に引かれるのは、もっと嫌だ。
私は、どうしたいんだろう。……どうしたいかすら、分かんない。
そんな曖昧な気持ちでいるなんて。
はあ……自己嫌悪に陥りながら、再びため息をついた。
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