君と僕のボーダーライン


どこに向かっているのかも解らないまま走っていたら、何かにぶつかった。

勢いがあまりにもよくて、お互い思い切り跳ね飛ばされる


「った……咲絢?」


『じ、神宮寺君?』


もう体力も気力もなくて、フラフラとよろめく私の手を掴んで留めてくれる。

その人は神宮寺君だった。


「その顔、たか帰ってきたんだな」


ちょっとだけ切なそうに眉を下げて、でも口元は少し笑っている。

何だかよく分からないその神宮寺君の表情に、私はどうしていいか分からない感情をぶつけるように、神宮寺君の胸を叩いた。



『…も、もう嫌。もう忘れたい。こんな気持ち、もういらない…』


こんな気持ち、持っていても苦しいだけ。

私の前にはくっきりと線が引かれている

その向こう側にしか、私の望むモノはない


「俺が、…俺が、忘れさせてやる」


胸を叩く腕ごと、神宮寺君に強く抱きしめられて、隼人のキツイ香水のニオイとは全く違うニオイに囲まれて

弾けたように私は声を上げて泣き出した。


『ぅわぁぁあああぁんっ』


忘れさせてくれるならいいと思っていた。

現実は甘くなくて

その真実を知っても、私は隼人に嘘でも嫌いと言えなかった


苦しみが重りになって、心の中に溜まっていく


もう限界

もう耐えられない


だって好きだから。



―――『高杉君』のことが好きだから。



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